【なぜ目隠しをする?】布橋灌頂会とは|立山・芦峅寺で体験する極楽往生の儀式(富山)

なぜ目隠しで橋を渡る?

富山県立山町の芦峅寺(あしくらじ)で、
白装束に身を包み、目隠しをした女性たちが静かに橋を渡る——。

初めてこの光景を見た人は、
「なぜ目隠しを?」「何のための儀式なのだろう?」
と不思議に思うかもしれません。

この行事の名は「布橋灌頂会(ぬのばしかんじょうえ)」

立山信仰の中で生まれた、女性の極楽往生を願う特別な儀式です。

本記事では、布橋灌頂会の意味や歴史、なぜ目隠しをするのか、
そして現代に受け継がれる理由を、初めての方にも分かりやすく解説します。

目次

布橋灌頂会(ぬのばしかんじょうえ)とは?

布橋灌頂会は、富山県立山町・芦峅寺地区で行われる伝統行事で、
立山信仰に基づく宗教儀式のひとつです。

白装束をまとった女性が、
目隠しをしたまま「布橋(ぬのばし)」と呼ばれる橋を渡り、
僧侶の導きによって儀式を終えます。

この橋渡りは、
この世からあの世へ、迷いから救いへと向かう象徴的な行為とされ、
一度参加すると「極楽往生が約束される」とも言い伝えられてきました。

女性たちは白装束で目隠しをしながらゆっくり歩き、橋を渡ることで罪や穢れが許され、極楽浄土へ導かれると信じられてきました。

白装束と目隠しをして布橋を渡る女人衆 2023年9月の布橋灌頂会

なぜ目隠しをするのか?布橋灌頂会の深い意味

布橋灌頂会でもっとも印象的なのが、
参加者が白装束に身を包み目隠しをして橋を渡るという点です。

これは単なる演出ではありません。

仏教の世界観では、
布橋の下を流れる川は「三途の川」を象徴し、
橋は「生と死」「迷いと悟り」の境界を表しています。

目隠しをすることで視覚を断ち、
音や風、足元の感覚だけを頼りに進む——
それは、自らの内面と向き合い、無心で歩む修行でもあるのです。

情報が氾濫する時代に生きる私たちにとって、この体験は強く心に残るものがあります。

2023年9月24日の布橋灌頂会

立山信仰と女性救済の歴史

立山は古くから霊山として信仰を集めてきましたが、
かつては女人禁制の山でした。

女性は立山へ登ることが許されず、
信仰の場から遠ざけられていた時代があります。

そこで生まれたのが、
山に登らずとも救われる道としての布橋灌頂会でした。

芦峅寺は、立山信仰の拠点として栄え、
門前町として多くの参拝者を受け入れてきました。

布橋灌頂会は、
「誰にでも救われる道はある」という立山信仰の思想を
今に伝える貴重な行事なのです。

実際に参加すると、どんな体験になるのか

布橋灌頂会は、現在も3年に一度
主に9月下旬に執り行われています。

儀式当日、参加者は白装束に着替え、
僧侶の読経が響く中、焔魔堂(えんまどう)を出発しゆっくりと布橋へ向かいます。

閻魔堂前 2023年9月の布橋灌頂会

目隠しをすると視界は遮られ、
足元の感覚や僧侶の声だけが頼りです。

この状態で布橋を渡り、その先の極楽浄土を象徴する姥堂(うばどう)に向かいます。
極楽に導かれた後は目隠しを取り、身も心も開放されて、再び布橋(三途の川)を渡ってあの世からこの世に戻ってきます。
女人衆が迷うことがないように、僧侶たちが最初から最後まで引導してくれます。

姥堂にて立山連峰を拝み極楽浄土へ 2023年9月の布橋灌頂会

単なる見学ではなく、
“体験する信仰行事”であることが、
布橋灌頂会の大きな特徴です。

見学だけでも価値がある理由

布橋灌頂会は、必ずしも女人衆として参加せずとも、
見学するだけで十分に意味を感じられる行事です。

  • 白装束の行列
  • 川に架かる布橋
  • 周囲の自然
  • 読経の声と雅楽の音
僧侶たちと雅楽 2023年9月の布橋灌頂会

これらが重なり合い、
他では味わえない独特の空気感が生まれます。

写真や映像では伝わらない、
「場の力」を感じられるのが、この行事の最大の魅力です。

開催時期・場所・アクセス情報

  • 開催時期:3年に1度(9月下旬頃)
  • 開催場所:富山県立山町 芦峅寺地区(閻魔堂~布橋~姥堂)
  • アクセス:富山地方鉄道「立山駅」から路線バスで約25分
  • 車:立山ICから約30分 立山山麓スキー場駐車場を臨時駐車場とし、会場までのシャトルバスが運行
  • 参加申請:開催年の7月頃に「立山博物館」「立山町役場」公式サイトで参加募集
  • 参加費:1人 20,000円(2023年9月現在)
  • 白装束衣装一式の貸出が含まれます(白い着物・帯・草履・笠・目隠しの布)
    ※足袋・肌襦袢・数珠は参加者が用意して持参します。
・見学

一般参加者

  • 参加申請:開催日当日
  • 体験料:1人 3,000円(2023年9月現在)

見学

  • 観覧エリアにて自由見学、無料

※開催年や見学方法は変更される場合があるため、
 事前に立山町や立山博物館の公式情報を確認するのがおすすめです。

関連サイト

まとめ|布橋灌頂会は「今こそ見たい」行事

布橋灌頂会は、
派手さや分かりやすさとは無縁の行事です。

しかしそこには、
人が「救い」を求め、「生き方」を問い続けてきた
長い歴史が静かに息づいています。

参加者の中には、
「怖さよりも、不思議な安心感があった」
「渡り終えた後、心がすっと軽くなった」
と語る人もいます。

観光として訪れるだけでなく、
意味を知った上で現地に立つことで、
この行事はより深く心に残るはずです。

富山に残る貴重な信仰文化として、
次の開催の際には、ぜひ一度その空気を体感してみてください。


立山信仰は、布橋灌頂会だけで完結するものではありません。
芦峅寺を中心に、今もなお受け継がれる祈りの文化があります。

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